お湯に浸かる

どうにかなれ

言葉が出なくても言葉にしたい

 

 

多分この記事はいずれ別の場所に移すと思う。でも今は移す場所もないのでここに。

一冊の小説を読んだ。高校生の頃から追っているシリーズで、大好きな本。なのに最近は悲しいことに新刊への嗅覚がものすごく鈍っていて、発売してから半年ぐらい経った今やっと気がついた。

 

読書感想文というものはネタバレを挟まずに書くものと、ネタバレを挟んで書くものがあると思うけれど、私は基本的にネタバレを挟む。ので未読の方は注意。

 

前作からもう3年も経つのかと、完結したと思ったいたから、第二部が始まって嬉しかった。だからこそ今作の最後は脳を鈍器で殴られたような衝撃とショックがすごかった。

黒猫シリーズを追っている人ならきっと第一部の最終作は狂うほどにやけたと思う。小説を読んでいる幸福、シリーズを追っている幸せをいただいた。

ずっとずっとこの二人は同じ方向を向いて、一般的な名前のつく関係性でなかったとしても同じ未来を歩むのだと信じていた。信じていたというよりは、それが当たり前だと思っていた。
そんな二人の離別。黒猫も付き人も大学から離れてしまう。付き人は研究人生そのものに一度終止符を打った。
二人のこれからよりも、付き人が研究から一度離れるという選択をとったことが一番の驚きだったかもしれない。

追いつきたい、追いつきたいと思っていたらいつの間にか追いつきたいと思っていた人の存在がなくても、自分の思考を確立することができるようになったこと。他人であれど同じ世界をみていたはずの二人は別々の場所を見るようになっていたこと。
ただ、誰が悪いとかそういう次元にいないからこそ心臓がバクバクした。

作者の森晶麿氏は一作目を書いた時からこのような未来を考えていたらしい。なんなら私たち読者は以前の作品でこのような二人の関係性を読んでいた可能性があった模様。
この二人はこの作品が始まった時からこうなることが決まっていた。現実でもたまに考えることだった。自分の思考や、相手の選択なんて初めから決まっていて私たちは自分で全てを決めているようにみえて、決定事項の上をなぞっているだけなのではないかとか。

黒猫の人生観が現れる一文が大好きだ。Kindleでブックマークした。

 

二人の関係性についてのみの感想文になってしまったけれど、内容はいつもの黒猫シリーズでいつ読んでも美しいなと思う。
内容についての感想をきちんと書くのが昔から苦手。きちんと全てを記憶したまま読み終えられないから。
ただこの文章が消えることがないこの世であってほしいなと思う。

 

次作はあるのかなあ。気になるし、出たら絶対に読むけどこうなった二人のこれからを読むのには時間がかかるかもしれない。
人生の境界線はすぐそこにあって、それがどんなこれからとこれまでを隔てるのかはわからない。

黒猫シリーズに出会えてよかった。こんな未来が待っているとは思っていなかったけれど、こういう衝撃も全てシリーズものを追うという副産物だと思う。